プレミアム付き食事券発行予算の謎

概要

  • 桑名市が1億5,400万円の予算でプレミアム付き食事券を発行する
  • 各店舗50部限定販売で5万5,000部発行
  • 発行部数が多すぎる
  • 1億5,400万円を給付すれば
  • 誰が得をするのか

各店舗50部限定販売で5万5,000部発行

  • 予算額は1億5,400万円
  • 2,000円/部の市負担で5万5,000部発行する
  • 市負担1億1,000万円(額面総額3億8,500万円)
  • 各店舗50部限定で販売する

以上が発表されている金額、部数である。
計算すると、以下のことがわかる。

経費:4,400万円
154,000,000-110,000,000=44,000,000

取扱可能店舗数:1,100店舗
55,000÷50=1,100

各店舗の食事券売上上限:25万円
5,000×50=250,000

各店舗への市の支援額上限:10万円
2,000×50=100,000

発行部数が多過ぎる

桑名市の飲食店数は約600

総務省統計局発表の「統計でみる市区町村のすがた 2019」によると、桑名市の飲食店数(2016年)は601である。多少の増減はあれど、3年で66.5%増はありえない。また、現在参加店を募っており、市内の全飲食店が参加する訳でもない。明らかに発行部数が多過ぎる。

600店分の金額

発行部数 : 3万部(−2万5,000部)
600×50=30,000

市負担額 : 6,000万円(−5,000万円)
2,000 × 30,000 = 60,000,000

額面総額 : 2億1,000万円(−1億7,500万円)
7,000 × 30,000 = 210,000,000

※カッコ内は発表予算との差額

単純には計算できないが、4,400万円とされている経費も少なくなるはずである。

市税を5,000万円以上余分に計上している。5,000万円は当事業予算の約1/3にあたる。額面総額も1億7,500万円過大に発表されている。市内すべての飲食店が参加したとしても、である。

1億5400万円を給付すれば

飲食店は自力で食事券を売らねばならず、売れ残った分の支援は受けられない。食事券を売るには客を集めねばならず、売れれば全て自店で使われる。(食事券は購入した店でしか利用できない。)いつ感染が拡大・収束するかわからない中、支援を受けるには店主・店員が幾重にも感染リスクを負うことになる。集団感染が起きた後も営業を続けられるのか。そのリスクは得られる金額に見合うのか。

154,000,000÷600=256,666

当事業予算の1億5400万円を600店で分けると、25万6666円になる。経費が400万円かかったとしても、各店舗が食事券の売上で得られる上限額の25万円は給付できた。給付であれば、店舗は新たに感染リスクを負うことなく、確実に支援が得られる。市も紙・デザイン・印刷代、特設サイトの製作・運営費、参加店舗の申込受付や食事券分配などたくさんの経費を払わずに済んだのである。

別の記事に書く予定だが、これは感染拡大を招く政策である。飲食業界”だけ”にまず支援するのも疑問だが、「市内飲食店事業者の手元資金の確保を支援する」のが目的であれば、資金を給付すればよかったと思わざるを得ない。

誰が得をするのか

飲食店を支援すると言いつつ、給付ではなく店舗に負担のある食事券の発行。過剰な発行部数、過剰な予算。誰が得をするのか。

額面総額を(おそらくは経済効果規模として)わざわざ掲載しているので、市長や賛成市会議員の手柄になるのかもしれない。市長は予算の提案説明において、「市内経済団体から」「経済対策についてのご要望をいただいた」としている。

特設サイトの問い合わせ先・参加希望店舗の申込先は、なぜか市役所ではなく商工会議所である。手数料などは支払うのか。参加店舗の審査の有無も気になる。審査があるならどのような審査基準で誰が審査するのか。商工会議所は市の機関ではない。

5万5000部刷ったとして、2万5000部の余剰分はどうするのか。もし特定の店舗だけ50部の上限を越えて売っていたとしたら、その店舗も得をすることになる。その店舗は誰が決めるのか。

印刷業者、特設サイトの製作・運営会社は給付なら必要のない仕事を請け負っている。全部数印刷したのであれば、過剰な2万5000部の分は増収である。

何を根拠に5万5,000部発行すると決めたのか、市に問い合わせる予定である。根拠が妥当でなければ、不当な公金の支出である。

出典

令和2年4月臨時会(市長提案説明)
令和2年度補正予算 | 4月補正予算
桑名市プレミアム付き応援食事券特設サイト
統計でみる市区町村のすがた 2019|総務省統計局

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