プレミアム付き食事券発行を含む緊急経済対策補正予算案可決

概要

  • 4月3日に市議会臨時会で市長提案の補正予算案が可決された
  • 主に緊急経済対策のための補正で一般会計を1億5851万8000円増額した
  • プレミアム付き食事券の発行は感染拡大を招く恐れがある
  • まず市民の命と健康を守ってほしい
  • 反対・賛成議員一覧

補正予算案(市長提案説明)

概要

  • マスク・消毒液等の購入費用(251万8000円)
  • 緊急経済対策
    1. プレミアム付き食事券の発行(1億5,400万円)
    2. 利子補給制度の拡充(200万円)
      • 市内の小規模事業者が対象
      • 日本政策金融公庫の特例措置融資で市が金利の半額を補給する
    3. 官公需における柔軟な対応
      • 新年度予算での市内事業者への優先発注
      • 物品調達や公共工事の前倒し発注
      • 迅速な支払
  • ふるさと応援基金から必要な額を繰入れる

プレミアム付き食事券の発行は感染拡大を招く恐れがある

プレミアム付き食事券とは

  • 市内飲食店事業者の手元資金の確保を支援するために発行
  • 市内の消費喚起につなげることをめざす
  • 1冊5000円で7000円分の食事券を販売する(2000円分を市が負担する)
  • 飲食店で各店舗50冊限定販売(購入した飲食店でのみ利用できる)
  • 利用期間は令和2年5月7日から令和2年10月31日
  • 購入対象者は市内在住者に限定しない

感染予防の呼びかけと真逆の行動を促す

世界が、日本が、三重県が、桑名市が、不要不急の外出を控えろ、3密(密閉・密集・密接)を避けろ、越境するなと言い続けて久しい。多くの市民はそれに従い、子どもからお年寄りまで、不安・不便・不自由な生活に耐え続けている。ひとえに新型コロナウイルスに感染しない・させないためである。

食事券の購入・利用のための外出は、不要不急の外出ではないのか。各店の販売部数と利用期間が決まっている食事券の購入・利用のために、人が密集・密接することはないのか。購入者は市内在住者に限定されておらず、市外から人を呼び込む。桑名市は、国の緊急事態宣言で特定警戒都道府県に指定された愛知県・岐阜県に隣接している。

3月27日の市長記者会見時には4月下旬とされていた発売日は、5月7日に延期された。おそらくは国が全国に拡大した緊急事態宣言が5月6日までであることを受けてであろう。しかし、県内・市内の感染者は日々増加しており、状況は悪化している。5月7日に収束しているとは思えない。利用期間最終日の10月31日に収束している保証すらない。なぜ今売るのか。なぜ今利用期間を決めたのか。

市長の提案説明によれば「新型コロナウイルス感染症の収束状況を見定め、適切なタイミングで食事券をご利用」するのは、「消費者」である。発行に当たって感染予防をする気など全くない。特設サイトには以下のように書かれている。

今回の応援食事券の販売はあくまでも厳しくなっている飲食店を応援し、市内の経済を守ることが目的であり、決して積極的に外出や外食を勧めるものではありません。事前に応援食事券を購入し、テイクアウト等を活用するなど、感染状況および感染予防、感染拡大防止に十分留意してご利用ください。

書けばいいというものではない。積極的に外出・外食を勧めないならば、飲食店でしか購入・利用できない食事券を発行すべきでない。部数制限・利用期間の設定までして、市長が、市議会が、市税を投じて、早期の外出・外食を勧めているのである。
「事前」とはいつのことか。すでに市内でも感染が確認されている上、市民は2ヶ月以上生活を制限されてからの販売である。

お店を守ろうと奮闘している飲食店を、食事券の購入で応援しましょう。もちろん、今は大切な人を守るために、責任を持って行動し、できることを実践しましょう

特設サイトにはこうも書かれている。まさか収束状況の見定めに加えて、責任まで利用者に押し付けるつもりか。「大切な人」がいてもいなくても、不要不急の外出を控えるべきである。

給付すればよかった

飲食店は特に感染リスクが高く、閉鎖されている国々もある。緊急に補償金を給付して、飲食店を閉鎖するなら理解できた。世界各国で取られている方法と同じである。効果も期待できる。このタイミングで、独自に外出・外食を促す市長の見識のなさには言葉を失う。承認する議員も同様である。

プレミアム付き食事券発行予算の謎」という記事に書いたので詳細は割愛するが、予算額も多過ぎる。市内の飲食店は約600店であるのに対し、1,100店舗分の食事券を発行する予算である。そして、その多過ぎる1億5400万円の予算があれば、市内すべての飲食店に食事券を完売して得られる資金と同等の給付ができたと考えている。

飲食店への給付であれば、食事券による感染拡大の恐れもない。飲食店も余計な感染リスクや、食事券が売れ残って支援が受けられないリスクを負わずに、確実に資金が得られたはずだ。

まず市民の命と健康を守ってほしい

特定の事業者への優遇

予算の提案説明や、「新型コロナウイルス感染症に関する市長メッセージ」を読んでいると、伊藤徳宇市長は、明らかに(おそらく一部の)市内事業者のために働いている。市民のことを「消費者」と思っている節さえある。「市内事業者の方々から、直接様々なお声をお聞きし」、「市内経済団体から」は「経済対策についてのご要望をいただいた」のだそうだ。

桑名市プレミアム付き応援食事券の特設サイトを見ると、問い合わせ先・販売希望店の申し込み先が、桑名商工会議所になっている。言うまでもなく、商工会議所は市の機関ではない。

市の公式ツイッターで商工会議所の企画を宣伝すらしていた。行政機関の情報ばかりツイートしている中で、異質である。市が商工会議所の下請け機関のように振る舞っている。行政はすべての住民に対して公正・公平に行われなくてはならない。特定の団体への優遇は許されない。

市民は後回し

市長も認識している通り、市民の生活は逼迫している。突然の休校・休園、状況が悪化した中での再開、再度の休校・休園。いつまで続くかわからないマスクの着用、手洗い、除菌、あらゆる行動の”自粛”を要請される日々。生活に影響のない市民の方が少ない。
県からの休業要請もあった今、満足に仕事ができない人、仕事がなくなった人、仕事を休みたくても休めない人、皆それぞれに困っている。ウイルスへの恐怖、いつもと違う生活の中、経済的不安を抱えているのは飲食店事業者だけではない。

市長は第2弾、第3弾の対策をすると言っているが、順番には大きな意味がある。資産も限られている中、まず行ったことは、飲食店事業者への支援、事業者への融資支援拡充、事業者への発注と支払、職員への期末手当前倒し支給、だったのである。市民は協力ばかりを要請され、命や健康まで差し出された挙句、支援や給付は後回しにされている。

市民の命と健康と安心が軽視されている

まず市民の命と健康を守ってほしい。何よりも優先されるべきはずである。一部の事業者の要望に応えるために、市民の命や健康を差し出さないでほしい。事業者の声以上に、市民の声を聞いてほしい。市長・市議会議員は市民の代表として選出されたのであり、市税は市民の資産である。

市民は不要不急の外出を控えればいいのか、食事券の購入・利用のために外出・外食をすればいいのかすらわからない。市長や市議会は、相反するメッセージを同時に発している自覚はあるのか。ただでさえ不安な生活を送る市民を混乱させ、さらなる不安を与えていることを理解しているか。

食事券を買える市民は、外食にお金を払う余裕のある市民である。本当に困っている市民は、食事券を買っている場合ではない。そして、行政は本当に困っている人から優先して救うべきである。

国の対策が不十分な中、独自の支援や対策で脚光を浴びている自治体も出てきている。真っ先に感染を拡大させるような政策を取る市に住んでいることへの落胆は大きい。不安が募るばかりか、恥ずかしいとすら思っている。このまま販売されれば、今まで以上に感染に怯えて暮らすことになるであろう。

この非常時に、市長が食事券を発行したことを忘れてはならない。賛成した市議会議員も同様である。民意を表すには、(たくさんの署名を集めるのでなければ、)選挙しかないからだ。何かの感染症が流行った際に、まず市税で食事券を発行されるのが嫌であれば、別の人に投票するしかない。食事券を発行したことが評価されたと思われてしまうからである。

反対・賛成議員一覧

反対(4)

  • 仮屋武人(桑風クラブ)
  • 石田正子(日本共産党桑名市議団)
  • 多屋直美(日本共産党桑名市議団)
  • 伊藤恵一(無会派)

賛成(20)

  • 渡邉清司(絆)
  • 冨田薫(絆)
  • 辻内裕也(絆)
  • 成田久美子(絆)
  • 水谷真幸(絆)
  • 渡邉仁美(絆)
  • 森下幸泰(絆)
  • 太田誠(絆)
  • 倉田明子(絆)
  • 南澤幸美(絆)
  • 満仲正次(桑風クラブ)
  • 諏訪輝富(桑風クラブ)
  • 水谷憲治(桑風クラブ)
  • 市野善隆(桑風クラブ)
  • 佐藤肇(桑風クラブ)
  • 松田正美(フォーラム新桑名)
  • 愛敬重之(フォーラム新桑名)
  • 畑紀子(公明党桑名市議員団)
  • 森英一(公明党桑名市議員団)
  • 伊藤研司(無会派)

その他

  • 伊藤真人(フォーラム新桑名):議長のため投票せず
  • 近藤浩(桑風クラブ):欠席

出典

令和2年4月臨時会(市長提案説明)
令和2年度補正予算 | 4月補正予算
新型コロナウイルス感染症に関する市長メッセージ 
桑名市プレミアム付き応援食事券特設サイト
Yahoo!ニュース「食事券や期末手当前倒し 桑名市、新型ウイルス経済対策 三重」伊勢新聞

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議員名の誤字を修正しました。大変申し訳ありませんでした。(2020.5.28.)