複合施設への交通アクセス問題と「子どもの権利」制度化の始動 ― 近藤奈歩議員の質疑から(桑名市議会 令和8年6月定例会)
この記事のポイント(3行要約)
- 旧消防本部への複合施設整備で、3施設を個別維持した場合と比べて約20億円以上のコスト削減が見込まれると市が試算を示した。
- 現在の総合福祉会館を歩いて利用している方が「遠くなる」問題は未解決で、バスの接続や施設開館前の待機環境など課題が残る。
- 子どもの権利擁護委員会(弁護士・福祉・教育の3名)が11月に設置され、相談窓口は12月にメディアライブ2階に開設される見通しとなった。
何が議論されたのか
無会派の近藤奈歩議員は、6月定例会の議案質疑で大きく2つのテーマを取り上げた。一つは旧消防本部への複合施設整備の財政効果と交通アクセス問題、もう一つは桑名市子どもの権利条例に基づく制度(擁護委員会・相談窓口)の具体的な設置内容だ。
論点・各議員と市の立場
複合化の財政効果:「約20億円以上」の試算
約5億9千万円という高額な改修費に対して、近藤議員は「個々の建物を修繕して使い続けてはだめなのか」という市民の声を代弁しつつ、財政効果の試算を求めた。
統括官(松岡考幸)の答弁によると、対象となる3施設(総合福祉会館・地域コミュニティ化・ふれあい天元プラザ)を今後も別々に維持した場合、それぞれで大規模改修工事や維持管理のランニングコストが重なるという。建築物のライフサイクルコストの考え方(一般財団法人建築保全センターの基準)をもとに試算すると、3施設を個別に維持する場合と旧消防本部に集約した場合とでは、約20億円以上のコスト差があると説明した。さらに、近年の建築費高騰を考慮すればその差はさらに広がる見込みという。
ただし「物価の変動が大きく、はっきりした数字を示すのは難しい」とも認め、あくまで試算であることが強調された。
交通アクセス問題:「遠くなる」市民への対応は?
近藤議員は、現在の総合福祉会館を歩いて利用している高齢者や体の不自由な方から「遠くなって困る」という声を多く受けていると紹介した。
旧消防本部(移転先)へは、桑名駅から三重交通バスで片道250円、コミュニティバスで100円の経路がある。ところが近藤議員の調べでは、コミュニティバスで正方向(約13分)で来られる場合と、反対周りで40〜50分かかってしまう場合とがあり、後者は高齢者の方には現実的に難しいという。
さらに、桑名駅発8時30分のバスが施設開館(9時)前の8時43分に消防署前バス停に到着してしまうため、夏の炎天下や冬の寒さの中で外で待たせることになりかねない、と問題を提起した。
市の答弁は「運行時間を考慮し、先に来た方にはロビーで待機いただける環境を整える」というものだったが、バス路線の見直しや増便については「移転後の利用実態を把握した上で、関係機関と連携しながら必要に応じて検討する」にとどまった。
近藤議員はまた、施設利用者から電話で聞いた話として現在の総合福祉会館の空調が「2年も使えていない」状態だと指摘し、工事延期の場合の臨時対応を市側に求めた。
子どもの権利擁護委員会の委員選定
近藤議員は昨年12月(令和7年第4回定例会)から子どもの権利擁護委員会の設置を求めてきた経緯があり、今回の予算計上を「やっと」と歓迎した上で、具体的な委員の選定方法を確認した。
市民環境部長(山下祐生)の答弁によると、委員は弁護士・福祉関係者・教育関係者の3名構成を予定している。重要なのは、市の子ども施策を所管する部署(こども未来部・教育委員会など)に所属する人物は選ばないという独立性の確保だ。人選は関連団体・各会へ相談した上で進める。
子どもの権利相談窓口の設置
桑名メディアライブ2階(人権センター内)に、12月に新たな相談窓口を開設する計画が示された。相談員1名を増員し、週3日程度の開設を想定。電話相談と対面相談(基本予約制、LINE予約可能)に対応する。
子ども向けに親しみやすいキャラクターを子供から募集し、窓口の周知に活用する方針も示された(賞品費として1万1,000円が計上されている)。
12月の開設までの間は、既存の相談窓口が対応窓口になる。
桑名市民への影響
複合施設に関しては、今の場所から遠くなる方への配慮がまだ十分とは言えない状況だ。バスの接続問題や開館前の待機環境については「移転後に検討する」という答弁にとどまり、移転前に具体策が決まるかは注視が必要だ。
子どもの権利相談窓口は、いじめや家庭内の悩みを抱えた市内の子ども(18歳未満)が安心して相談できる場として機能することが期待される。LINE予約対応や図書館(メディアライブ)内という立地は、子どもが気軽に立ち寄りやすいという設計意図が読み取れる。
これまでの経緯
桑名市子どもの権利条例は令和6年12月に可決、令和7年4月に施行された。条例第23条に権利擁護委員会の設置が定められており、今回の予算計上はその具体化に当たる。近藤議員は昨年12月から進捗を問い続けてきた経緯がある。
出典・確認方法
本記事は桑名市議会インターネット映像配信の令和8年6月定例会(映像はこちら)を参考に、くわな会議が独自に要約・解説したものです。発言の正確な文言や詳細は、公式の会議録検索(公開後)でご確認いただけます。
本記事中の予算数字は以下の公式資料で照合済みです。
- 令和8年第2回定例会(議案・資料一覧) — 桑名市議会公式
- 令和8年度補正予算参考資料(第4号)PDF — 事業概要と金額
- 令和8年度一般会計補正予算書(第4号)PDF — 歳出明細
- 議案質疑通告表 PDF — 質疑議員名・質問項目
- 令和8年4月13日 全員協議会 事項書 PDF — 複合化方針の説明会